2011-04-26 [長年日記]

_ [Music]Book パリ左岸のピアノ工房

パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)(T.E. カーハート/Thad E. Carhart/村松 潔)

子供の頃にピアノを弾いていた、今はフランスに住む外国人が、いろんな偶然と出会いの末に、グランド・ピアノを入手し、音楽の歓びとともに暮らす日々がやってきた、という「まるで私のお話そのまんま!」な本。

私がピアノを購入したお店Nord Pianoは、幸い一見さんお断りなお店では無かったのですが、この本に出てくる工房のように、たくさんの再生を待つピアノがお店の奥の工房に所狭しと置いてあって、誇りと自信に満ちた表情の職人さんがいる素敵なお店です。

この本の中には、ヨーロッパ、アメリカ、アジアのさまざまなピアノメーカーのピアノが登場しますが、物語の主人公が選んだピアノは、オーストリアの(今は無き)メーカーStinglの1930年代製のピアノです。

音が鳴りひびいたとたんに、思いがけないことに、背筋がぞくぞくした。鍵盤のタッチはなめらかで、いい感触だったが、キーを動かすのにちょっと力が必要だった。スタインウェイの有名な絹のように柔らかいタッチや、ほかの有名なメーカーのビロードのようなタッチを思わせるところはなかった。

私のピアノは東ドイツの(今もある)メーカーAugust Försterの1970年代製のピアノですが、上記の表現は私がこのピアノに出会った時の感覚に驚くほど似ています。 元々の予算を3割もオーバーしていたので、予算内のピアノを散々試奏したあとで「興味本位でこれも弾いてみようかな?」くらいの軽い気持ちでこのピアノの前に座って、シューベルトのアルペジョーネ・ソナタの冒頭をそっと奏でたとたんに、そのピアニッシモのあまりの美しさに心が揺さぶられたのでした。

物語は、ピアノを入手しておしまいではなくまだまだ続き、大人になってからあらためてピアノを習ったりとか、子供たちのために競争ではなく音楽の歓びを大切にする音楽学校を見つけたりとか、素晴らしい音楽家によるマスター・クラスを見学したりとか、私もこれから時間を見つけながらそういう経験を家族でいっしょにできたらいいなと思います。

そういえば今日は、久しぶりにゆうなに歌ってもらって、「なごり雪」「翼をください」「見上げてごらん夜の星を」の伴奏をしました。 いつかフォーレの歌曲とかもできるかな。

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