2008-07-13 [長年日記]

_ [OSS] 未来に対する責任 / La responsabilité dans le futur

毎回、プレゼンのたびに何か新しいチャレンジをしようと思うのですが、先日、日本で「オープンソースとビジネスの実際」というテーマでお話をした際は、落語みたいに本題の前に世間話から入る、というのをやってみました。

で、実際にお話ししたのはこんな内容でした。

フランスに引越ししてからかれこれ1年以上経ちますが、フランスで暮らしていても、いろんなウェブサイトなどを通じて、日本のニュースは日々入ってきます。 例えば、高齢者の医療費や年金が今とても大きな問題になっている、そんなニュースを目にして、あれこれ考えさせられるわけです。

さて、高齢者は、自分たちが直面しているこれらの大きな問題に対して、一体誰のせいなのかと不満を持っていることでしょう。 しかし、誤解を恐れずに言うと、私はその多くは高齢者自身の責任だと考えています。

医療費の問題にしても、年金の問題にしても、一朝一夕に起きたことではありません。 長い間いろんな問題が先送りにされてきて、ついにどうにもならなくなって、そして今こんなに大きな問題になっているのであれば、それはすなわち、長い間ずっとそうした政治を支持してきた人たち、つまり高齢者自身にそれ相応の責任があるからです。

そして、同じことは私たちにも言えます。 例えばあなたが、毎日プロプライエタリなOSの上で、プロプライエタリなソフトウェアを使うとき、あなたは毎日貴重な一票を不自由な未来のために投じていて、一方私は、毎日GNU/Linuxの上で、オープンソースソフトウェアを使うことで、自分のささやかな一票を自由な未来のために投じています。 また、例えばあなたが、DRM(デジタル著作権管理)のかけられた音楽を購入し、特許に縛られたフォーマットで再生するとき、あなたは自分の一票でそれらを支持し、一方私は、DRMのかかっていないCDで音楽を購入し、特許に縛られないフォーマット(OGG Vorbis)で再生することで、自分の一票をそういった制限のない社会に投じています。

いま高齢者に起きていることは、けっして他人事ではありません。 自分で意識しているかどうかに関わらず、私たちの日々の選択は、私たちの明日、そして未来につながっているのです。

というわけで、今日のお話が、みなさんがこれからプログラマとして生きていく中で、日々の選択のヒントになればいいなと思います。

「自由とか面倒くさい。今こっちが便利だからこっちがいい。」というのは、私にとって朝三暮四の故事*1に出てくる猿の言い分と同じように聞こえます。 むしろ、朝三暮四の場合はどっちの選択も結果が同じですが、自由に対する責任の放棄は、それが果たしてどういう結果を招くかを考えれば、よりひどいと言えるかもしれません。

私自身は、未来に対するまだ目に見えない脅威に想像力を働かせれば、より不自由な世の中になる方がよっぽど面倒くさいのではないかと考えています。

あわせて読みたい→フリーソフトウェア財団が説くiPhone 3Gを避けるべき5つの理由、あとオープンソース携帯電話の話 - YAMDAS現更新履歴

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*1 猿回しが猿にトチの実を与えるにあたって、「朝に三つ暮れに四つ」と言うと猿が怒ったので、「朝に四つ暮れに三つ」と言ったら猿が喜んだという故事。目前の違いにばかりこだわって、同じ結果となるのに気がつかないことの例え。

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本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]
_ テスト (2008-07-20 21:36)

あれ?名前入力しないと投稿されないんでしょうか?

_ mt (2008-07-20 21:38)

昨日からwikiの動作が不安定です。<br>昨日は、プレビューはできましたが保存はできませんでした。<br>現在はサーバーに繋がりません。

_ かずひこ (2008-07-21 00:30)

> mtさん<br>ディスクがあふれて大変なことになっていて、現在メンテナンス中です。<br>それはそれとして、左のペインの下の方にメールアドレスは載せてありますので、日記エントリと関係のないお知らせは直接メールでご連絡ください。

_ こ~りん (2008-07-21 20:56)

1対1なら、かずひこさんのおっしゃるのが正論なんですが、掲示板も同時に止まってしまうから、wikifarmユーザーで情報を共有できるのが、ここしかないというのが現状ではないかと。

_ mt (2008-07-24 22:40)

直ったようで、ありがとうございます。 <br>検索エンジンでこのwikiの作者を調べていましたら、ちょうどこのブログの2003年の記事が出てきたので、軽い気持ちで書きました。 <br>最新の日記に書いちゃったのは、古い日記に書いても気づかれないブログってのが結構あって、それに対応する習性のようなもので……

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