2008-11-17 [長年日記]

_ [OSS] 2008年度日本OSS貢献者賞受賞者インタビュー 奥地 秀則氏 / l'interview d'Yoshinori

奥地さんというか、よしのりの2008年度日本OSS貢献者賞受賞者インタビューの記事を読みました。 個人的な一番の感想は、「へぇ、よしのりはこんなシャツ持ってたんだ〜」ですが、それはそれとして、ここ。

Q4:OSSにまつわる話で一番インパクトのあったできごと,あるいは一番影響を受けたOSS関連の話題は?

(略)

しかし,オープンソースとフリーソフトウェアを同一視するならば,GNUプロジェクトを創始した時に,Richard M. Stallmanが執筆したGNU Manifestが最大といってよいでしょう。この文書に影響されてフリーソフトウェアを始めた人は世界中に何十万といます。

私もまた、その何十万の一人です。

つまり何が言いたいかというと、「かずひこはフランスに行ってから急に自由!自由!とか言い出した」と世間では思われているかもしれませんが、今から13年前にGNU Manifestに出会って感動してプログラミングを始め、それ以来私が書いたコードのほとんどはフリーソフトウェアなので、それは大きな誤解ですよ〜、ということです。:)

みんな,私自身を含めて,参加して,手を動かしていく過程で,少しずつ新しいことを学び,失敗もしながら,段々成長していくのです。それが受け入れられるだけの懐の深さというものがあるように感じます。

私も本当にそう思いますし、これからもずっとそんな毎日を続けていきたいと思っています。

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_ 国籍法の改正案 / l'amendement de la loi sur la nationalité

大垣さんのところで国籍法の改正案が成立間近 - 日本崩壊の危機という記事にコメントを書いたので、ついでにこっちにも書いておきます。

Comment from: かずひこ [Visitor]

海外で生活すると、確かに「日本国籍はおいしい」というのをよく実感するので、日本国籍取得の悪用に対する懸念は理解できます。

しかし一方で、現在フランスで「移民」として生活している立場からすると、「移民が増えることは即ち問題である」という論は、過度のナショナリズムを感じさせる極端な意見だと感じます。もちろん、フランスでもそういう意見の人もいればそうでない意見の人もいますが、そんな様々な立場の意見のバランスの中で、私たち家族が十分な居場所が与えられていることをとても幸せに感じています。

また、「日本文化と他の文化では文化的な違いは大きく」という点についても、別に日本文化だけが決定的に他の文化と際立って異なっているわけではなく、その他の文化もそれぞれに十分に個性があり、十分に大きく異なっている、というのが私の実感です。

確かに、日本人が他の文化を受け入れて多文化が共生する社会になるには時間がかかるかも知れません。ですが、徐々にそうなっていくのは不可避なのではないかと思います。私はむしろ、日本だけが特別だという意識を日本人だけが信じつづけて世界から孤立していくことの方が、日本の将来に対する危機だと考えます。

国籍取得の悪用を防ぐための方策にさらなる検討を要するという点は同意しますが、本来国籍を取得できてしかるべき子供たちの権利が、偏狭なナショナリズムのためにつぶされてしまってはいけないと思います。

さて、私が不自由な社会よりも自由な社会を、閉ざされた社会よりも開かれた社会を好むのは、「そうあるべきだ!」みたいな理念以前に、私自身が実際にそういう社会から大きな恩恵を受けているからです。

もし、アメリカ人が一人残らず、自分たちだけの利益ばかりを追い求める人だったとしたら、GNUもフリーソフトウェアも生まれなかったでしょう。 でも実際はそうではなく、フリーソフトウェアはアメリカで生まれ、そして言うまでもなく私は大きくその恩恵を受けています。

もし、フランス人が一人残らず、移民に対して否定的な意見の持ち主だったとしたら、私はいま肩身の狭い思いをして日々怯えながら暮らしているでしょう。 でも実際はそうではなく、私たちにも積極的に心を開いてくださる地元の人たちとの交流のなか、家族みんな幸せに暮らしています。

ですから、今までそういう恩恵を特に受けたことがなかったり、逆に不自由で閉ざされた社会に恩恵を受けていると、違う考えをするのはそれも当たり前なわけで、じゃあどうやったら自由で開かれた社会との最初の幸運な出会いを演出することができるのか、ということをこれからはちょっと意識してみようと思います。

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