去年の秋からコンセルヴァトワールに通うようになって、火曜日の夜に(毎週じゃないけれど)上級クラスの学生たちのコンサートがあると知って、時間が許す限り子供Hといっしょによく聴きに行っていました。 そして、いい演奏だったなぁと思った時は、演奏後に演奏者を見かけたら「よかったよー」と声をかけるようにしていて、人によっては「ありがとう」と言ってもらえたり、人によっては特に反応がなかったりとかしていました。
そのうちの一人に、エルガーのチェロ協奏曲(の第一、第二楽章)を弾いた台湾から留学しているチェリストの人がいて、彼女はとくに「ありがとう!」という反応がよかったので印象に残りました。 その後、コンセルヴァトワールで見かけたり、たまたま聴きに行くコンサートがいっしょで会ったりする度に挨拶をしているうちに親しくなって、「一度うちに遊びにおいでよ」というわけで、ゆうなの妹がイギリスから遊びに来ている時に寿司パーティーをして彼女を招待しました。 もちろん、「楽器を忘れないでね!」とお願いして。
そして彼女がやってきて、ちょっと挨拶をしたらすぐに、「シューベルトのアルペジョーネ・ソナタ知ってる? いい曲だよね。第二楽章をやってみようよ!」とお願いして、さっそくあらかじめ用意しておいた楽譜を出してきて、いっしょにやってみました(こんな曲)。
ピアノの序奏の後、静かに歌うようなチェロのメロディが間近で聞こえてきて、伴奏しながらぞくぞくしました。 一回とおして最後まで弾いたら、彼女がすぐに「もう一回やろう!」と言って、もう一回やってみると、さっきよりもさらに表現がよくなっていて、やっぱりすごい。
次は、子供Hが最近さぼり気味だったヴァイオリンを出してきて、キラキラ星の旋律を一緒に弾いてもらいました。 チェロと合奏するのは初めての体験で、子供Hも大喜びです。
そして、今度は彼女がソロでバッハの無伴奏チェロ組曲からアルマンドを弾いてくれました。これも素晴らしい。
ここでようやく、本来の目的だった寿司パーティーがスタート。 子供H曰く彼女は「僕のお友達!」で、彼女も子供Hがお気に入りだそうで、こんな素敵なツーショットになりました。 手巻き寿司を食べながら台湾のことをいろいろ教えてもらって、例えば「そう言えばフランス語で『台湾で』というのは au Taïwan (←国だとこうなる)か à Taïwan (←街だとこうなる)かどっち?」と聞いたら、「フランスにとって台湾は国じゃなくて島なので à Taïwan なの」だそうです。 「そっか、いろいろ複雑だね」と言うと、「うん、複雑だね」と。
食後も続くよ、音楽タイム! というわけで、ヘンデルのリコーダー・ソナタの楽譜を出してきて、私がアルト・リコーダー、彼女がチェロで通奏低音のベースのパートで、なぜか子供Hの指揮付きで、ト短調のソナタを全楽章通してやりました。 ソロと通奏低音の曲を鍵盤楽器抜きでこんな風にやるのは彼女にとっても初体験だったみたいで、面白がってくれました。
そして、実は彼女のお母さんはピアノの先生で彼女も以前はピアノもやっていたというので、アンゲルブレシュトのフランスの童謡の連弾曲集から簡単そうな(私は弾いたことがある)曲をやってみました。 さらに、それが終わると彼女がページをめくりながら「あ、これ面白そう!」と別の曲を選んだので、それも初見でやってみましたが、ピアノの初見でも曲の流れをつかむ勘みたいなのはさすがだなぁと感心するばかりでした。
こうやって音楽を真剣にやっている人たちを見ながら子供たちが刺激を受けてくれたら嬉しいし、何よりも私自身が音楽を好きでよかったと心から思ったのでした。