日本にいる間に、日本の元気なエンジニアの人たちに会っておきたいと思い、神戸からはるばる参加しました。
技術トレンドはミームであり、人が技術を広めるのではなく、技術が人を介して広がっていく、みたいなお話で、実際の経験の中で流行りつつある技術(Selenium)や、廃れつつある技術(dotProject)を紹介していました。
また、テスト資産はプロジェクトの文化として保守メンバーに継承され、プロジェクトの文化はやがて他のプロジェクトや会社組織に広まっていく、というお話でした。
プロジェクト・ファシリテーション(PF)、プラクティス、リソースの三つについてのお話でした。 まず PF については、PF は人ではなくロールであり、誰か一人がファシリテータなのではなく、プロジェクトの全メンバー(人とコンピュータ)がファシリテータとしてそれぞれやれることをやるのが大事という話でした。
続いてプラクティスについては、プロジェクト「に」プラクティス「を」適応させるのであって、その逆ではない、という話から始まりました。 変化の難易度は、他人を変えるのがもっとも難しく、自分を変えるのもそれなりに難しく、プラクティスやコンピュータの使い方を変えるのが一番易しい、という話から、日々のプラクティスを陳腐化しないように改善していった経験を紹介していました。 その例として、バーンダウンチャート、にこにこカレンダー、ふりかえりは最近あまり使っていない、とか、「かんばん」を変化させて「こんだて(仮称)」というプラクティスを始めた、とかのお話をしていました。
また、ペアプロとソロプロのメリットとデメリットを挙げ、ペアプロのメリットについては一度身につけると身体が覚えるとか、ペアプロからペアワークというプラクティスに変化している、というお話もありました。
最後のリソースについては、「残るものは動くコードとメンテナンスされているドキュメント」というお話で、その中でもテストコードや自働化スクリプトやドキュメントは鮮度が落ちやすいので、メンテナンスを習慣づける躾が重要、というお話でした。
テスト、TDD、BDD という流れの歴史を丁寧に紹介し、TDD から BDD にすることで変わるものと変わらないものは何か、というお話でした。 変わるものとしては、「ふるまい」を記述することで、より設計に集中できるとか、その結果、より短時間にテストを通すために Fake It! を多用するようになった、という話でした。 そして、変わらないものは「駆動」だというお話でした。
あとで角谷さんと話したのですが、「テストしてない」→「TDD」というジャンプでの感動に比べて、「TDD」→「BDD」というジャンプでの感動はそこまで大きくない気がします。 まだテストのありがたさに目覚めていない人は、一足飛びに BDD をやればいいと思いますが、すでに TDD をやっている人たちが BDD に乗り換えるためには、どうやって後押しするのがいいのでしょうか。 というか、今の私が TDD のままの人なので、そんな私が BDD を試してみれば何かヒントがあるのかも知れません。はい、試してみます〜。
ウェブデザインも構造化からオブジェクト指向的な考え方に変わってきた、という指摘から始まり、Internet Explorer 7 とともに XHTML と CSS が当り前になっていくだろう、というお話でした。
発表者のお名前の読みが私の祖父とまったく同じだ、というのにもかかわらず、私の知識不足でかなり打ちのめされました。。。
ハードウェアの話、コンパイラの話、関数型言語とラムダ計算の話、といった低レイヤーの話で、ハードウェアのらへんはぎりぎり理解できたのですが、それ以降は辛かった。
情報系の専門を出ていないとこのへんの知識が弱いのが辛いところですが、それでもコンピュータでお仕事をできるのは、いい時代になったなぁ、ということなのでしょうか?
XP 祭関西で聞いた話とそれなりにかぶったのですが、平鍋さんの話は何度聞いてもチャレンジする勇気が出てきますね。 今日のお話の中では、ソフトウェアはコミュニケーションでできている、そこがこれまでのものづくりと大きく異なる、という指摘を特に興味深く聞きました。
「世界の変化はあなたから」という言葉についてのお話は、別のエントリで書きます。
11 人の方がそれぞれ楽しいお話をしましたが、特に面白かったのは、druby.org の方から来た人さんの見積りの話でした。 見積りは「何%の確率で何日までにできる」という確率分布でその分布の幅がリスクになる、とか、リスクを見なかったことにすれば幅は狭まる、とか、小さなストーリーに分割することで実績のサンプルが増えるのでより短期間に精度の高い統計的な予測ができる、とかのお話で、このネタだけで少なくとも 30 分くらいは聞きたいなぁと思いました。
会場の敷地に入るなり、サンタ帽をかぶった平鍋さんが案内板を持って立っている、というところから始まり、今回もホスピタリティの徹底したイベントでした。
前回のイベントは、例えば私も発表していたように「外の人」な発表者もいたのですが、今回はほとんどが永和システムマネジメントやチェンジビジョンの人が発表者でした。 中の人だけでこの規模のイベントの発表者を揃えられるのは本当に凄いと思いますが、個人的には「外の人も巻き込みながらも一つの中心テーマがあるイベント」という方が好きです。
でも何はともあれ、日本の元気なエンジニアの人たちに会いたいという希望は十二分に果たせて、本当に満足な一日でした。
今回の上京にあわせて、角谷さんが送別会を企画してくださいました。 唯一の情報源にして公式サイトが角谷さんの mixi の日記の一ページ、という地味な告知にもかかわらず、永和システムマネジメントの中の人、Web+DB PRESS の中の人、デブサミのやや中の人、Rabbit の中の人、YARV の中の人、qwikWeb の中の人、Apple の営業の人(?)、ツインスパークの中の人、ドリコムの中の人など、10 人以上もの方が参加してくださいました。
ここでも、元気な人たちといろんなお話をすることができ、元気をたくさんいただきました。 これからもよろしくお願いします。
[追記] 反応リンク集
平鍋さんのブログの記事「"Social change starts with you"(contd.)」の中で紹介されている Kent Beck の言葉。
カールトン、ぼくは『周囲を変えたい』という状況になった場合、いつもこの言葉を忘れないように努力する--『自分が変えられるのは自分だけ』。でも、自分が変わるとすぐ、自分と周囲との関係が変化するんだ。そして、それで周囲の人が変化する、そして、自分の周りが変わり始める。大きな変化というのは、こういう風に始まるんじゃないかな、つまり、一人の人が世界と自分との関係を変えることを選択する。そして、その変化が広がっていく。
- Kent http://tech.groups.yahoo.com/group/extremeprogramming/message/123258
"I can only change myself." というのは、とても素敵な言葉ですね。 そして私はこの話を読んで、河井寛次郎さんの次の言葉を思い出しました。
一人光る
皆光る
何も彼も光る
これは、「いのちの窓」という本の中の言葉で、「火の誓い」という文庫本にも収められています。興味のある方はご覧ください。
寛次郎さんは、文化勲章を辞退していますが、陶芸は一人だけの力で作るものではない、とよく話していたそうです。
先日、寛次郎さんの故郷の安来で河井一門の作品展を見に行きましたが、それぞれ独自の個性を持ちながらも、どこかしらつながりを感じることができて、それはまさに「チーム寛次郎」とでもいうべき世界でありました。
へー、いい言葉ですね。>「いのちの窓」<br><br>フランス、がんばってね。前身レディース、いけてます!