2011-11-28 [長年日記]

_ Book Kobo by fnac を買いました / Je viens d'acheter le nouveau Fnacbook.

FnacのKobo Touch端末

そろそろ電子書籍の端末が欲しいなと思ったのが、10月の中頃。 そこで、そういえばFnacがフランスでは前から電子書籍を頑張っていたなと思って店頭で試そうと思ったら一台もなくて、聞いてみると「あと数週間で新機種になるから今はない」とのお返事。 調べてみると、Koboの端末を採用するようで、今ならColorかTouchか、たぶんTouchかなと思いながら待っていると、Kobo Touchの採用が正式発表されました。 すると今度は、楽天がKoboを買収するというニュースが飛び込んできて、これはきっと良いニュースなんだろうと期待しつつ予約注文して、発売初日に無事にゲットしました。

手元の日本語のEPUBとかPDFとかをいくつか端末にコピーしてみると、予想通り日本語フォントは入っていません。 で、調べてみると、端末をUSB経由でマウントしたルートディレクトリに、fontsというディレクトリを作って、そこにフォントを入れればいいみたい。

まずは、自由なフォント、IPAフォントを入れてみました。 予想どおり、少し線が細すぎて、eインク端末だとかすれた感じでちょっと読みにくい。

つぎに、青空キンドルで配布されている、IPAフォントをちょっと太くした「青キン明朝フォント」を試すと、可読性がすごくあがって、これならいい感じです。 ただ、「青キン明朝フォント」は、半角文字が等幅の書体を使っているので、英語やフランス語を横書きで読みたい私にとっては、その都度フォントを切り替えたくなって不便です。 なので、まずはIPA明朝フォントの代わりにIPAex明朝フォントを使って、青キン明朝フォントと同じように太らせてみようとしたのですが、Ubuntu11.10のFontforgeでいまいちどんなパラメータでやればいいのかよくわからず、うまくいきませんでした。

よく考えたら、IPAex明朝フォントの欧文書体がものすごく好きなわけでもないし、せっかくなので他のお気に入りの欧文書体と組み合わせることにしました。

和欧混植の問題点 - 欧文フォントと組版(4)」によると、和欧混植における欧文フォントの選択は「x-heightが大きい書体を使う」とあります。 一般論としてはまったくそのとおりなのですが、私の欧文書体の好みは、x-heightの小さい、Garamondのようなオールドスタイルから、Fournierのようなトランジショナルスタイルあたりなのです。 なので、和欧混植の際の多少のサイズの不揃い感は、好みじゃないx-heightの大きい書体で読むことに比べたら、甘んじて許容します。

というわけで選んだのが、これも自由なフォント、Linux Libertineです。 Linux Biolinumもエレガントで美しい書体ですが、普段の読書には普通のセリフ書体の方がいいかなと。 まず、フランス語のサンプルは、シャルル・ペローの「赤ずきんちゃん」です。 フラットスキャナに端末を置いてスキャンしたので、微妙にピントがあわずにぼやけた感じの画像ですが、もちろん本体ではくっきり表示されています。

シャルル・ペローの「赤ずきんちゃん」

いよいよ、Linux Libertineに青キン明朝を組み合わせるわけですが、そこで一工夫がいります。 まず、Linux LibertineのEmサイズが2048なのに対し、青キン明朝は1000です。 かといって、青キン明朝のEmサイズを2048にすると、今度は欧文に対して字が大きくなりすぎます。 そこで、青キン明朝のEmサイズとベースラインの位置の数値をいろいろ試行錯誤して、ひとまずEmサイズが1800(ベースライン上が1600、下が200)で試作してみました。 [追記] 現在は、ベースライン上が1660、下が140。

和文欧文混植のサンプルは、先日達人出版会からCC BY-NC-SAライセンスで発行されたばかりの「ケヴィン・ケリー著作選集 1」です。

Linux Libertine + 青キン明朝

数字が若干小さい気もしますが、アルファベットとの組み合わせを優先するなら、これくらいのサイズに抑えておいたほうがよさそうです。 でも、欧文のベースラインは、あともう少し上にきてもいい気もするので、もう少しいじってみようと思います。

まあこのへんは、あくまでも私の欧文書体の好みからくる葛藤ですが、みなさんもぜひお気に入りの欧文書体を使って、理想のバランスを目指してみてください。

書体にはまるのはこのへんにして、Kobo Touchの端末そのものの感想はというと、やや微妙。

  • フォントサイズを一度大きくして小さくすると、画面の下のほうが一部表示されなくなることがある。でもそこに表示されている前提で次のページは始まるので、結果として一部が読めない。[追記] システム標準のフォントではいまのところ再現しないけれど、素のLinux Libertineでも再現した。
  • ページ送りはパネルのタッチかドラッグだけなので、右手で持って右手でページを戻るとか、左手で持って左手でページを進めるとか、かなり無理。 [追記] 例えば右手で、右端の方でもわずかに左から右にドラッグすればページを戻せます。でも、頻繁にやると指を痛めそうだけど。
  • PDFを(マージンの分だけ)拡大表示したら、ワンタッチでページ送りができない。
  • 最初のセットアップとか端末のバージョンアップにWindowsかMac OSがいる。
  • EPUBでルビがでない。
  • 縦書きPDFだと、右をタッチしたらページ送りというのが混乱する。
  • 英英と独独の辞書はあるけど、仏仏の辞書がない(ただし、簡単な単語対訳の辞書は英<->仏独伊西のがある)。
  • 再起動したり、コンピュータからアンマウントしたりするたびに、書籍一覧のフォントがデフォルトに戻っているのか、日本語の書籍名が表示されない。一度なにか本を読んだあとは表示される。
  • microSDのマウントが不安定で、読んでいる途中にいきなりアンマウントされたようになる。 [追記] 他のmicroSDで試したら安定した。たぶんメディアのせいだけれど、不安定だったのがFAT16で安定しているのがFAT32という違いが関係あるかもしれない。

また、Kobo by Fnacというサービスについての感想も、同じく微妙。

  • 端末から電子書籍の検索をする際に言語指定ができず、また検索結果にも言語に関する情報がないので、例えば「フランス人作家の作品の英訳」をつかまされることがある(サイトでは検索結果の詳細に言語が書いてある)。 [追記] 端末での検索でも、詳細表示したら最後に言語が書いてあった。しかし、非DRMかどうかはそこでも分からない。
  • DRM無し、という検索フィルタが無い。
  • とにかくAmazonに比べて検索機能の使い勝手がしょぼすぎる。

端末としてはカナダなどですでに売られていましたが、フランス市場には投入されたばかりということを考慮すると、今後に大いに期待したいところです。 特に、EPUBのルビとか、縦書きの際のタップ位置とかの日本語での利便性は、楽天の買収で開発が加速するといいなぁ。

もちろん、いいところもたくさんありますよ。

  • 安心の標準規格EPUB。
  • microSDでストレージ容量を増やせる。
  • 軽くて小さい。
  • タッチ式のソフトウェアキーボードは使いやすい。
  • ウェブブラウザになる。
  • スケッチブックになる。

なにはともあれ、私はすごく気に入っているんですよ!

ちなみに、フランス語のパブリックドメインEPUBは、 http://www.ebooksgratuits.com/ebooks.php が良さそう。 フランス語のアポストロフをちゃんと組んでいるところがいいし、「DRM反対!」と大きく訴えているところもすごくいい。


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