いつか子供たちが大人になって、子供の頃の思い出を語る時に、「父の弾くスカルラッティを聴くのが好きだった」と言われるのが私のひそかな夢だったりします。
私がスカルラッティという作曲家を知ったのは、たぶん大学時代にリパッティのCD集の中に入っていたのを聴いた時だと思います。 J.S. バッハと同じ年に生まれたこのイタリアの作曲家は、555曲ものチェンバロのためのソナタを書いて、私はそのうちの20曲くらいしか知らないけれど、リパッティの弾くチャーミングなK. 380、ホロヴィッツの弾くフーガK. 87、アルゲリッチの弾く疾走するK. 141、ミケランジェリの弾くパストラールという別名を持つK.9 とかとか、いくつも好きな曲や演奏があります。 私もK. 380とK. 9は時々弾いていて、横で聴いている子供たちも気に入っているようです。
555曲もあれば、そろそろ子供Hが弾けそうな曲があるかな?と思いつつも、全部楽譜を眺めて易しそうな曲を探すのは大変だなと思っていたら、楽譜屋さんでウィーン原典版の "Bach – Händel – Scarlatti, Leichte Klavierstücke mit Übetipps" というオムニバスの楽譜を見つけて、そこに収録されているスカルラッティのソナタからK. 32を選んでみました。 (ちなみに、K. 32だけの楽譜なら、ウィーン原典版のサイトのダウンロードのところの「Primo Flyer」がこの楽譜の抜粋で、この曲は1ページで収まるので完全な形で入手できます)。
子供Hにとって、初めてのスカルラッティです。ニ短調の美しいアリア。これまで、大人が弾いているのしか聴いたことのない、好きな作曲家の曲を自分も弾くのがよほど嬉しいらしく、頑張って譜読みしているのが微笑ましい。