2013-04-28 [長年日記]

_ [Travel] フランス中南部の村Sauguesでの休暇 / Les vacances à Saugues, un petit village de la Haute-Loire

子供Hの幼稚園時代の先輩のJちゃんのお母さんから、Jちゃんのお父さんの実家での休暇に、今回はJちゃんの兄弟が他に行かないから一緒に行かない?と誘われたので、まるっと一週間有給を取って家族揃って8泊9日の旅に連れて行ってもらいました。 しかも、Jちゃんの家の車に一緒に乗せてもらえたので、私も2時間くらい運転を交代はしましたが、随分楽に行く事ができました。

行き先はオート=ロワール県の街、Saugues(ソーグ)。オートは「(高さが)高い」という形容詞なので、オート=ロワール県はてっきりロワール地方の北にあるものだと思っていたのですが、これはロワール川の上流という意味で、実際はロワール地方からずいぶん南で、そこの人口約2000人弱の村です。

ここは、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の宿場町として栄えた場所で、行く途中の車の中では、ちょうどあったリストのCD集から「巡礼の年」をBGMにして気分を盛り上げていきました。 また、Jちゃん一家は毎週日曜にミサに行く敬虔なカトリックの家族で、しかもお母さんは歴史家なので、道中もいろいろ「この地方は何年に誰それがどういうことをした場所で...」とか、かなり濃いガイドをしてくださいました。

滞在先のJちゃんのお父さんの実家は、お父さんの両親はすでに他界されていて今はJちゃん一家の別荘になっていますが、お二人が健在だった頃の写真があったり、そのさらに祖父母の古い白黒写真があったり、まるで時間が昔のまま止まっているみたいな不思議な空間でした。 書斎の本棚で、古い百科事典、モーロワのフランス史の本、第二次大戦中のレジスタンスに関する本、レヴィ・ストロースの「野生の思考」、バルザック、モーパッサン、などの背表紙を眺めながら、どんなご両親だったのかしらと想像したり。

滞在中は、子供たちはよくしゃべるJちゃんのフランス語のシャワーを大量に浴びていっしょに遊び回ったり、それぞれ一人ずつ静かに本を読んで過ごしたり、村営プールの水泳教室に行ってみたり、近くの丘の上のマリア像まで散歩したり、少し離れたところにある教会や昔の修道院に車で連れて行ってもらったり、金曜のマルシェでチーズとか野菜を買ったり、土曜になぜか10センチも雪が降ったので雪の中を1時間くらい散策したり、といろいろ楽しく過ごすことができました。

Sauguesの町並み 近くの丘のマリア像 ほろ酔いゆうな まさかの大雪

また、Jちゃんのお母さんとは、滞在中に宗教とか文化とか歴史とか政治とかたくさんお話をしました。 彼女は(ちょうど滞在中に法案が可決した)同性婚に反対で、Jちゃんのお兄さんは反対デモに行ったと以前聞いたこともあります。 とはいえ、フランスでカトリック信者だから同性婚反対は当たり前というわけでは決してなく、 @hori_shigeki さんのツイートによると、「現在、フランス人のうちカトリック信者を自認するのは約64%ですが、毎日曜ミサに行く実践的信者は4.5%しかいません。直近の調査では、熱心なカトリック信者のうち同性婚承認に賛成は41%(仏人全体では60%)、同性婚者が養子をとる事への反対は70%(仏人全体では54%)。」だそうです。

個人的には、他の国ならともかく、憲法の第一条でいきなり「政教分離」と「平等」を謳っているフランスで、同性婚を(無知や思い込みによってではなく)理屈で否定するのは無理だと思っていますが、こういう話題でどれくらいつっこんで議論をしてもいいのかの距離感がいまいちよくわからず、微妙な顔をしながら聞いていました。

また、「外国人参政権とか、まったくおかしい」とか言われた時も、たとえ彼女が念頭に置いているのが私の参政権ではなくムスリムの参政権だったとしても、やはり私としては反応に困ったりもしました。

ただ面白いのは、そんな保守的な意見の持ち主であるにも関わらず、去年の大統領選ではサルコジ氏ではなくオランド氏に投票したそうです。 曰く、「サルコジ氏はパリしか知らない成金で、フランスの地方に目を向けていないし、それに彼はフランスの大統領の伝統を破壊した」と。

家族で遠くまで旅行をするのは半年ぶりくらいの体験でしたが、ホテルではなく普通の家での滞在だったこともあって、文字通りアットホームでくつろいだ時間を過ごすことができました。 またいつか再訪できたらいいなぁ。


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